滅菌・消毒・抗菌 etc. 何が違うの？

ティッシュが、トイレットペーパーが、マスクが、うがい薬が、アルコールジェルがない。
コロナウイルスの影響を受けて様々な物資が買い占めによって不足してきたが、
ここ最近ようやく落ち着いてきた。
（とはいえ医療従事者の用いるガウンなどはまだ不足気味であるが）

品質はさておき、店頭でマスクやアルコールジェルが見えてきて
勢いに衰えが見えないコロナウイルスの第二波から身を守るべく、
歳末セールなどを利用して手指消毒用のアルコールジェルやウェットシートの購入を
検討している人もいるのではないだろうか？
ここでよく見るのが、
除菌シート、殺菌スプレー、消毒用アルコールジェル、はたまた抗菌仕様の商品などなど。
さて、皆はどれがどう違うのか区別できるだろうか？情弱となり企業のカモになっていないか？

今回はあやふやになりがちな
滅菌　消毒　抗菌　殺菌　除菌
の違いについて細々と綴っていこうと思う。

言葉の定義

・滅菌・・・すべての微生物を殺滅、または除去すること

・消毒・・・人畜に有害な微生物（または対象とした微生物）だけの殺滅

・抗菌・・・菌の繁殖を防止すること（経済産業省の定義では対象は細菌のみ）

・殺菌・・・菌を殺すこと。この用語には殺す対象や殺した程度は含まれていない。

・除菌・・・菌を除くこと。手を洗う、濾過、ふき取りなど方法は様々。
　　　　　対象や程度は含まない概念。

細菌と微生物の違い

言葉の定義を読んで
「なるほど微生物が…細菌が…すべての菌を…人や獣に有害な菌を…」
となっただろう。
ここで、
「じゃあ、あの商品で謳っている抗菌は…殺菌は…除菌は○○に効果があって、
　○○に効果がなくて…」
となる人はある程度の有識者なので、正直この記事をこれ以上読む必要はないと思うし、
適切な感染対策を講じることができると思う。
ここでは、微生物？細菌？話題になっているコロナ " ウイルス " ？
となっている人のために設けた。

初めに断っておくと、微生物というのは、微生物とは目にみえないくらい小さな生物のことである。細菌、菌類、ウイルス、微細藻類、原生動物などを含む総称である。

このことを前提にいよいよ細菌とウイルスについて説明していきたいと思う。
なお、ここに時間を割くのは二つが同じものではなく違うものであるのを
説明するためだけのものなので、
難しいと感じた人は、なんとなく違うんだなと理解して読み飛ばしても構わない。

こんな感じで、
細菌にある細胞壁がウイルスになかったり
ウイルスにはタンパク質の合成に関わるリボソームがなかったり
はたまた同じウイルスでもエンベロープを持つもの持たないものがあったり
etc.
と色々と違いがある。
この辺が抗生物質が効くか効くか効かないか、生物・非生物の区別、
アルコールによる消毒が効くか効かないかなど様々な要因になるのだが、
長くなってしまうので割愛。

結局何が言いたいかというと、
細菌とウイルスの構造は違うということである。
構造が違うということは細菌に効果がある（を殺せる）ものが
必ずしもウイルスにあてはまるわけではないということだ。

抗菌って（コロナ）ウイルスに効くの？

なんとなく見えてきたのではないか？
ここでもう一度抗菌の定義を思い出してほしい。

・抗菌・・・菌の繁殖を防止すること（経済産業省の定義では対象は細菌のみ）

抗菌加工製品のガイドラインのフォローアップ結果について（2003年2月)（PDF形式：62KB）

つまるところ、

抗菌で効果があるのは一般的に細菌のみである。
コロナウイルスをはじめとして抗菌はウイルスには効果がない。

思い当たる節はないだろうか？
電車のつり革、便座、ドアノブ 階段の手すり etc. 抗菌と書かれた品々
商品のパッケージに「抗菌効果！」
目につくところに「抗菌加工が施されています」

ぶっちゃけてしまえば、今渦中のコロナウイルスには全く効果がない（笑）
なんなら不活性化もしないので、
ウイルスのついた抗菌仕様の製品に触ったのちに、口や手の粘膜に触れれば侵入もする。

消毒？除菌？殺菌？どれを選べばいいの？？

○○用シートや○○用アルコールスプレーとして販売されている商品があるが、
どれを選べばいいのという話だ。多分、ほとんどの人がわかってきたと思うので、
答え合わせとして読んでいただければ…

ここで定義のおさらいだ。

・消毒・・・人畜に有害な微生物（または対象とした微生物）だけの殺滅
・殺菌・・・菌を殺すこと。この用語には殺す対象や殺した程度は含まれていない。
・除菌・・・菌を除くこと。手を洗う、濾過、ふき取りなど方法は様々。
　　　　　　対象や程度は含まない概念。

この中で、ヒトに有害な細菌や（コロナ）ウイルスを完全に殺滅できるのは
消毒
のみである。

殺菌や除菌は殺しこそすれど、コロナウイルスなのかインフルエンザウイルスなのか
その他なのかもわからないし、99.99%殺すのか50%殺すのかもわからない。
この2つの言葉はその商品を作っている企業の匙加減による基準を達成したものなのだ。

優良な企業なら、但し書きや、商品の裏面などに基準について
詳しく記載されているかもしれないが、
怪しい中華製品やコロナ騒ぎに乗じて利益のみを得ようとする企業は、
殺菌、除菌といういかにもなワードで不安につけこんでくるのだろう。

歳末セールで安いシート、ジェルを見つけたからといって飛びついてはいけない。
消毒用アルコールシート・ジェルなのか、
除菌・殺菌用であったときにどんな微生物に効果があって
どの程度殺滅するのかを冷静に判断しなければいいカモとして食われるだけだ。

まとめ

・抗菌は（コロナ）ウイルスには効果がない

・ヒトに害する微生物を完璧に殺滅したいなら '' 消毒用 '' を選べ

・除菌、殺菌は対象や程度にばらつきがある。買うならよく読むこと。