日本でも2回目ワクチン接種率が50%を越えた。(2021年9月)
日本で主に接種されているのが、ファイザー、モデルナ製、
次いでアストラゼネカ製だが、ワクチンが足らなくなってきたことで、
第4のワクチンとして、ノババックス社のワクチンを検討している。
さてここで質問だが、
それぞれのワクチン、何が違うのかわかるだろうか?
mRNAワクチン、ウイルスベクターワクチン…
様々な作用機序がある。
このような観点からこの記事では、
- ファイザー
- モデルナ
- アストラゼネカ
- ジョンソン エンド ジョンソン(以下 J&J)
- ノババックス
この5社のワクチンについて比較・解説していく。
この記事の目次
ワクチンの比較
各項目についてまとめてみた。
ファイザー、モデルナ、アストラゼネカについては、
添付文書と製薬メーカーのホームページを参考にした。
J&J、ノババックスについては添付文書がないため、
製薬メーカーやCDCのサイトを参考にした。
やはり気になるのが、mRNAやウイルスベクターなどの種類だろうか?
これから個々について解説していく。
mRNAワクチン
5社の中だとファイザーとモデルナがmRNAワクチンに該当する。
mRNAワクチンでコロナに対する抗体ができるまでの
一連の流れを図に示してみた。
知見がある人が見ると、
mRNAがPEGで内包されていない!とか
リボソームの説明が雑!とか
色々飛んできそうですが、わかりやすさ重視ということで何卒。
mRANワクチンと聞くと、なんだそれ?となるかもしれないが、
割と新しいワクチンの作成方法。
mRNAとか抗原提示とかなんぞや?って人は、
これから解説していく。
この図でわかった!という人は読み飛ばしてくれて構わない。
mRNAとは?
mRNAとはわかりやすく言うと
タンパク質の設計図
である。
ヒトの体はタンパク質からできており、
生成の一連の流れが上の図である。
はじめに、設計図の元であるDNAがRNAとして写し取られる。(転写)
このままのRNAではタンパク質の合成に関与しないイントロンという
無駄なものがあるので、
次に、スプライシングを経て、タンパク質を合成するのに
必要な情報が書いてあるエキソンを抽出したmRNAを作る。
最後に、リボソームがmRNAの情報を読み取りタンパク質を合成する。
(正確にはタンパク質の前のアミノ酸を合成する)
mRNAワクチンではヒトのこの機能を利用して
スパイクタンパクというウイルスの破片のようなものを作らせているのである。
ウイルスの破片のようなものと形容したのは
スパイクタンパク自身にはウイルスを増殖させたり、
感冒症状を引き起こすことがないからである。
よって、前の記事で紹介したような
生ワクチン接種で感染というようなことは起こらない。
抗原提示とは?
ヒトの体に細菌やウイルスが入ったら即アウト!はい、感染~
とならないのは免疫のおかげである。
免疫にも自然免疫と獲得免疫があり、
獲得免疫は更に細胞性免疫と(体)液性免疫に分かれる。
今回は予防注射に関わる免疫として、液性免疫を紹介する。
まず、人の体に細菌やウイルス(抗原)が入ると、
白血球(体内の異物を除去してくれる細胞)の
好中球やマクロファージ、樹状細胞が貪食を行い、
体の中でウイルスたちが悪さできないように食べて無力化してくれる。
次に、この白血球のなかでも特にマクロファージや樹状細胞は、
食べたものを認識して情報をヘルパーT細胞に渡す。(抗原提示)
そして、抗原提示を受けたヘルパーT細胞は、
抗原に特異的な抗体を作るよう
抗体産生細胞であるB細胞を活性化させる。
最後に、B細胞が産生した抗体が抗原であるウイルスなどに
くっつき、ウイルスの毒性を消失させる。
ここで面白いのが、
抗体を初めて産生した際に(一次免疫応答)
B細胞は一部が記憶B細胞として残り、
再度抗原が体内に侵入してきた時に抗体を早く、多く生成する仕組みが
人体には備わっているということだ。(二次免疫応答)
mRNAワクチンでは液性免疫を利用して、
スパイクタンパク質による抗原で一次免疫応答を起こし、
ウイルスが侵入してきた際に、
記憶B細胞による二次免疫応答を利用して、
侵入しても感染を防いで不顕性にしたり、
感染しても早く、多く抗体を産生することで軽症にしているのである。
ウイルスベクターワクチン
5社の中ではアストラゼネカとJ&Jが該当する。
一般的なウイルスベクターワクチンではアデノウイルスが用いられており、
今回のワクチンでもアデノウイルスが使われている。
アデノウイルスは通常、風邪症候群を引き起こす主要病原ウイルスであるが、
ワクチンとして使用するウイルスには、
目的遺伝子(今回だとスパイクタンパク質を作る部分)のみを発現し、
ウイルス自体は増殖しないように調製されている。
大雑把に言ってしまうと、mRNAワクチンと殆ど変わらない。
mRNAを直接入れるか、
ウイルスにDNAを運ばせて、体内でmRNAを作ってもらうか程度の違い。
組み換えタンパク質ワクチン
ノババックスが該当する。
おそらく、最も馴染みが深いワクチン
日本でも既に帯状疱疹、B型肝炎、破傷風、百日咳などのワクチンは
この組み換えタンパクで作られている。
海外ではインフルエンザワクチンもこの方法で調製されている。
生ワクチンや不活化ワクチンに比べ、ウイルスそのものを使用しないので、
副反応が起こりにくいとされているが、
精製されたワクチン成分の免疫を起こす力が弱いことが多く、
ヒトの免疫システムがうまく働かない、
変異したウイルスには効果を示さなくなるなどの問題点もある。
mRNA、ウイルスベクターで遺伝子は書き換わる?
さて、いざワクチンを受けるにあたって、
一番懸念されるのが、
Q. mRNA、ウイルスベクターワクチンは遺伝子が書き換わる?
ということではないだろうか?
結論から言ってしまうと、
A. ありえない。あったとしても限りなく低い。
なぜなのかを詳しく解説していく。
まず、mRNA、ウイルスベクターワクチンで用いられている
mRNA、DNAは非常に脆い物質であるということだ。
通常の機序でタンパク質を合成する際も
mRNAは翻訳(タンパク質の合成)が終わるとすぐに壊れる。
常温だとすぐ壊れることもあって、
ワクチンを超低温で保存しなければいけないのは
ここの仕組み由来だったりする。
壊れるまでに書き換えられのでは?とも考えられるかもしれないが、
そもそも、mRNAはDNAへ逆転写されないと
ヒトゲノムへの書き換えに参加できない。
ウイルスは逆転写酵素を持っているので、
細胞での複製に割り込むことができるが、
mRNA単体では不可能である。
一応、ウイルスベクターワクチンによって、
ヒトゲノムへの挿入変異が起こり、
発がん性があるかもしれないが、限りなく低いと考えられる。
それを言うならコロナウイルスでウイルスゲノムの挿入変異が
起こるのとどっちが先かということになる。
…と理屈ではこのように言えるが、
正直な話、将来何が起こるのかわからないというのもひとつ。
一応、現在も市販直後調査という形で
安全性・有効性の調査は行われていて、
健康被害が起きた際には、
国の予防接種法に基づく補填が受けれることになっている。
まとめ
- mRNA、ウイルスベクターは
人体のタンパク質合成と免疫を利用した最先端のワクチン - ノババックス社のワクチンは、
馴染み深い組み換えタンパクワクチン - mRNA、ウイルスベクターで
ヒトゲノム(ヒトの遺伝子)が書き換わることは殆どない
参考
- コナミティ筋注添付文書
https://www.pmda.go.jp/PmdaSearch/iyakuDetail/GeneralList/631341D - COVID−19ワクチンモデルナ筋注添付文書
https://www.pmda.go.jp/PmdaSearch/iyakuDetail/GeneralList/631341E - バキスゼブリア筋注添付文書
https://www.pmda.go.jp/PmdaSearch/iyakuDetail/GeneralList/631341F - J&Jコロナワクチン
https://www.jnj.com/johnson-johnson-announces-real-world-evidence-and-phase-3-data-confirming-strong-and-long-lasting-protection-of-single-shot-covid-19-vaccine-in-the-u-s - ノババックスコロナワクチン
https://mvec.mcri.edu.au/references/novavax-covid-19-vaccine/ - CDC J&Jの副作用について
https://www.cdc.gov/coronavirus/2019-ncov/vaccines/different-vaccines/janssen.html - 国立感染研究所 新型コロナウイルスワクチンの国内導入にあたって
https://www.niid.go.jp/niid/ja/typhi-m/iasr-reference/2536-related-articles/related-articles-492/10182-492r06.html - 厚生労働省 副反応による健康被害が起きた場合の補償はどうなっていますか。
https://www.cov19-vaccine.mhlw.go.jp/qa/0003.html