コロナウイルスに有効な可能性があるワクチンが米国のFDA(米食品医薬品局)で
11日、緊急使用許可が出され、14日には米国で接種が開始された。
18日、アメリカの製薬会社「ファイザー」が
日本国内で初めて厚生労働省に製造販売承認の申請を行った。
モデルナのコロナワクチン、米当局が緊急使用許可へ(日本経済新聞)
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOGN180CW0Y0A211C2000000
アメリカで新型コロナウイルスのワクチン接種開始(live door NEWS)
https://news.livedoor.com/article/detail/19383284/
ファイザー社ワクチン 3月にも国内接種へ(live door NEWS)
https://news.livedoor.com/article/detail/19404400/
だんだんとコロナに対するワクチンへの希望が見えてきたが、
ワクチンに絡んでこんな話を聞いたことがないだろうか?
「体が弱い人や、体が風邪などで弱っていると、打ったワクチンの病気になる」
例えば、インフルエンザワクチンを打つと、
インフルエンザになる、
結核のワクチンを打つと結核になる、
…という具合だ。
今回はこの説について
細々と綴っていこうと思う。
この記事の目次
【答え】ワクチンを打つと病気になる?
結論からいうと、
なる場合のワクチンとならない場合のワクチンがある。
ワクチンと一口に言っても様々な作り方があるということが鍵になってくる。
製法によって、打った際に体が弱っていると
病気にかかったり、
あまり問題にならなかったりするのだ。
といっても現在では十分に安全な対策が
講じられ、
ワクチンを打ったからといって、滅多に感染することはない。
ワクチンの種類
生ワクチン
一番古典的であるが、今でも現役のワクチンの調製法だ。
そう、菌やウイルスなど抗原を直接接種する方法である。
多くの人はワクチンを作るとなるとこの方法がまず頭に浮かんでくるだろう。
「そんなことしたら、その病気にかかるだろ!!」
そう思いたくなるのは無理もなく、恐らく、
「体が弱い人や、体が風邪などで弱っていると、打ったワクチンの病気になる」
という説はこの辺から出回っているのだろう。
だが安心してほしい、現在の生ワクチンの調製法としては、
高い病原性を持つ病原体を
患者から分離して、
ヒト以外の培養液細胞中で増殖させ、
病原性を持たない弱毒性の病原体を
選別して調製している。
つまり、かなり弱っていて体にほぼ害をなす力がないものを体に接種しているのだ。
とはいえ、弱っていても死んではいないので、
流行性耳下腺炎(おたふく)の
ワクチン接種後に
稀に感染に似た症状として、
軽微な耳下腺炎や、
昔には、440万回あたりに1件、
ごく稀に生ワクチンのポリオワクチンを接種した小児で
ポリオと同じ症状が起こってしまうこともあった。
ポリオワクチンでポリオになる?(日本医師会)
https://www.med.or.jp/kansen/porio.html
しかし、2012年からポリオワクチンは
より安全な不活性化ワクチン(後述)になった。
これによってポリオはより安全に
予防接種を行うことができるようになった。
とはいえ、健康な人ならば、
まず生ワクチンで感染はしないので
安心して予防接種の恩恵に与ってほしい。
ポリオとポリオワクチンの基礎知識
(厚生労働省)
https://www.mhlw.go.jp/bunya/kenkou/polio/qa.html
現在生ワクチンで調製されている代表例をここに記しておく。
予防接種を受ける際に「あぁ、若干こいつ生きてんだなぁ」と感傷に浸れるだろう。
・風疹
・水痘(水ぼうそう)
・結核
・黄熱
・ロタウイルス
・麻疹(はしか)
・流行性耳下腺炎(おたふくかぜ)
不活性化ワクチン
ホルマリンや紫外線で病原体を
処理した(殺した)ワクチン。
増殖能力を消失しているので感染はしないが、細胞性免疫は誘導されない。
しかし、抗原としての役割は
保持しているので、
体液性免疫は誘導することができる。
基本的に前述した生ワクチン以外のワクチンは、
不活性化ワクチン(トキソイド)で調製されている。
細胞性免疫、体液性免疫ってなんぞや?
って人はこちらを参照。
とてもわかりやすく書いてある。
(本来記事内に詳しく書きたいところだが、
長くなってしまうので割愛。
需要があれば後に記事にして
詳しく書くつもり)
自然免疫応用技研株式会社
https://www.macrophi.co.jp/special/1564/#:~:text=%E7%B4%B0%E8%83%9E%E6%80%A7%E5%85%8D%E7%96%AB%E3%81%A8%E6%B6%B2%E6%80%A7%E5%85%8D%E7%96%AB%E3%81%A7%E5%A4%A7%E3%81%8D%E3%81%8F%E7%95%B0%E3%81%AA%E3%82%8B,%E8%8F%8C%E3%81%AA%E3%81%A9%E3%81%AB%E6%9C%89%E5%8A%B9%E3%81%A7%E3%81%99%E3%80%82
細胞性免疫、体液性免疫が
よくわからんという人は
いろんな免疫が関わっているほうが
免疫としては強いんだなぁぐらいでOK
トキソイド
不活性化ワクチンの一種。
不活性化ワクチンと同様に
毒性を失っているが、
抗体の産生に必要なパーツ(抗原決定基)は
保持しているタンパク質毒素を指す。
他にもサブユニットワクチン
(トキソイド含む)や
コロナウイルスへのワクチンとして
注目されている遺伝子ワクチンなどがあるが、
煩雑になるので割愛。
生ワクチンと不活性化ワクチンの比較
ここまで読んできて、
「あれ?不活性ワクチンだったら
感染もしないし、
全部この方法にすればいいんじゃね?」
と思う人もいるだろう、しかし、
「はいそうですね。」
とすべて不活性化ワクチンにすべて切り替えられない理由があるのだ。
表を使って2つを比較して、
詳細を後に述べていこうと思う。
生ワクチン | 不活性化ワクチン | |
---|---|---|
ワクチンの本体 | 免疫誘導する能力を残しつつ 非常に弱らせた病原体 | 免疫誘導を維持したまま感染性を 失わせた病原体やタンパク質 |
投与法 | 皮下接種、経口投与 | 皮下接種 |
誘導される免疫 | 体液性免疫、細胞性免疫 | 体液性免疫 |
免疫の持続 | 長期間 | 短期間 |
アジュバンド | 不必要 | 必要 |
価格 | 安い | 高い |
保存 | 低温 | 常温 |
投与法
一般的な感覚では、
インフルエンザの予防接種などは注射を用いて接種されるものだ。
(最近ではインフルエンザワクチンも
経口のものが出てきたが、
効果に疑問をもち、
導入していない病院・診療所もある。)
しかし、生ワクチンなどは、
経口でも効果があることがわかっている。
発展途上国や貧困地域で
ポリオなどのワクチンを接種する場面で、
清潔を確保するための資材(アルコール等)や場所が確保できない際に
経口ワクチンならば、容器だけで事足りるし、特別な場所も必要ない。
また、ある程度の知識があれば、
使えるという点も魅力だ。
注射にはある程度の経験を伴った手技が
必要だが、経口ワクチンならば、
それほど難しくない。
誘導される免疫
両者とも体液性免疫は誘導されるが、
細胞性免疫が誘導されるのは
生ワクチンのみである。
生ワクチンでは病原体が弱りながらも
生きているため、
良くも悪くも感染細胞が出来上がり、
細胞免疫も誘導される。
一方で、不活性化ワクチンでは
病原体は死んでいたり、
病原体のタンパク(トキソイド)のみで
あるので、感染細胞は出来あがらず、
細胞性免疫は誘導されない。
免疫の持続
誘導される免疫とほぼ被る内容であるが
一応解説。
生ワクチンでは弱りながらも
病原体が生きているので、
免疫の誘導は死んでいる病原体に比べて強く、長く起こる。
言い換えれば、不活性化ワクチンでは病原体は死んでいるので、
免疫誘導は起こるものの
生きている病原体ほどではない。
アジュバンド
アジュバンドについて詳しく説明すると
長くなってしまうので割愛。
簡単に説明すると、抗原と同時に接種すると
免疫応答を増強するものだと
考えてくれればよい。
生ワクチンでは十分に免疫応答が起こるが、
死んでいる病原体や病原体のタンパク質では
免疫が反応しないことがあるので
不活性化ワクチンでは
アジュバンドを添加する。
価格
生ワクチンは弱らせるだけでよいのだが、
不活性化ワクチンは抗原性の保持や
アジュバンドの添加の費用
適切なアジュバンドの模索の研究費など
+αの費用が発生するため、
不活性化ワクチンは生ワクチンよりも
高価になる。
保存
生ワクチンではウイルスが生きている状態を
保持するために、
低温かつ直射日光が当たらない
場所・環境を確保する必要がある。
一方で不活性化ワクチンでは
すでに病原体は死んでいるので
保存は常温でよいということになる。
不活性化ワクチンなら安全?
いままでを振り返って、
「なるほど、不活性化ワクチンなら
病原体が死んでいるから絶対安全なんだな」
と考えたのならば、ちょっと待った。
万全を期しているといえ、
そもそも
予防接種は人体に異物を入れている行為
に他ならないのだ。
アジュバンドによる過剰な炎症反応、
アレルギー反応、
性差、年齢差、etc.
非臨床試験やヒト以外の臨床試験の段階では
予期できないことが
ヒトで起こり得ることがある。
現在開発の進んでいるコロナへのワクチンも
企業が対策しているが、
若干の副作用が出ている。
日本のマスコミが報じない、
欧米「ワクチン接種」で見えた副反応のリアル
https://news.yahoo.co.jp/articles/47811267b33ba8be1f9646804a499a90fc09e81a
ワクチンに限らず、
副作用がない薬というものは
存在しない
リスクも含めたうえで
ワクチンの接種は考慮してほしい。
まとめ
長々と述べてきたがまとめると、
・デリケートで、比べるとやや安全
性に欠けるが、
効果は高く・長いのが
生ワクチン
・高価で、効くには数回打つ必要が
あったり、
長くもたないこともあるが、
管理が楽かつ安全なのが
不活性化ワクチン
・生ワクチンでは
弱いながらも
病原体が生きているので
感染に似た軽微な症状や
感染してしまうことも
ある。
参考
モデルナのコロナワクチン、米当局が緊急使用許可へ(日本経済新聞)
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOGN180CW0Y0A211C2000000
アメリカで新型コロナウイルスのワクチン接種開始(live door NEWS)
https://news.livedoor.com/article/detail/19383284/
ファイザー社ワクチン 3月にも国内接種へ(live door NEWS)
https://news.livedoor.com/article/detail/19404400/
ポリオワクチンでポリオになる?(日本医師会)
https://www.med.or.jp/kansen/porio.html
ポリオとポリオワクチンの基礎知識(厚生労働省)
https://www.mhlw.go.jp/bunya/kenkou/polio/qa.html
自然免疫応用技研株式会社
https://www.macrophi.co.jp/
日本のマスコミが報じない、欧米「ワクチン接種」で見えた副反応のリアル
(YAHOO! JAPAN ニュース)
https://news.yahoo.co.jp/articles/47811267b33ba8be1f9646804a499a90fc09e81a